「裏切りに遇う」というのは人生における最悪の経験のひとつです。
おおげさな話ではありません。
ギリシャ神話や古事記など、はるかかなたの昔から「裏切りの物語」は悲劇として語られ続けているのですから。
でも、これは同時に、多くの人が経験することでもありますよね。
「裏切りなんて、歴史上の偉人でもない私には関係ない」なんていうことは決してなく、友達や恋人、部下や上司に裏切られて嘆いた経験を多くの人がしていると思います。
「こんなの、ありえないでしょ!」と思いたいけれど、実はよくあること。。
それが「裏切り」の現実です。
ただ、面白いことに、あなたを裏切るのは大抵の場合、「裏切らない気がする相手」なんですね。
だって、みんな言いますよね。
「この人だけは、絶対、私を裏切らないと思っていたのに……」と。
つまり、最初から裏切りそうな相手に裏切られることはあまりないのです。
そして、裏切るなんて考えられないくらい信頼してきた人から裏切られる確率は結構、高いわけで。
だからこそ、裏切りは「悲劇」なのです。
どうしてそうなるのか……。
その理由もね、ここにあります。
「裏切る相手はたいていの場合、信頼している人である」というところに、“裏切りのからくり”が見えているんですね。
ものすごく簡単にいえば、「私を裏切らないはず」と期待することにより、私たちは裏切りに遇うことになってしまいます。
たとえば、あなたが小さな会社を立ち上げた社長なら、一番の右腕のような人に対して、「この人だけは私を裏切らないだろう」と期待するでしょう。
その他の社員やアルバイトが突然、「辞める」と言い出しても、別に驚きもしないし、失望もしません。
「まぁ、そんなものだろう」と思うので、裏切られたと感じないわけですね。
ところが、です。
右腕的な存在が「辞職する」と言い出したら、社長はこれを晴天の霹靂だと思うかもしれません。
そうなれば、
「一緒にがんばろうって言ったじゃないか!
それに、今が一番この会社の大変なときだと知ってるくせに!」
と怒り狂い、「ひどい裏切りに遭った……」と嘆くことになるでしょう。
けれども、右腕のような立場にいた人は、実のところ、ワンマンな社長の振る舞いにずっと耐えてきました。
「信頼されているから頑張ってきたけれど、もう耐えられない……」と思い、それで辞めたいといったとたん、「裏切りだ!」と責められて。。
……そんな場合もおおいにあるはずです。
でも、今のあなたが、友達や恋人に裏切られ、死にそうに辛い思いでこれを読んでいるのだとしたら、あなたからすれば私もまた、裏切り者でしょう。
「これを読めば、裏切りに遭った辛さが癒されるかも」と期待しているあなたの想いを今、私は見事に裏切りました。
つまり、そうなのです。「期待」があるところには「裏切り」が発生します。
裏を返せば、「期待がなければ、裏切りもない」んですね。
では、期待なんか持った自分が悪かったのか?
そんなことはありませんよ。
だって、「期待」というのは希望や夢と同じです。
叶わない場合もありますが、叶う可能性だって十分あるものですから、持ってもいいのです。
ただ、期待通りにならなかったとき、「これは裏切りだ!」と憤ることは避けたいもの。
なぜなら、それはあなたのハートを深く傷つけます。
「もう誰も信じられない……」と感じることになり、次の夢や愛を心に育てることが難しくなってしまうかもしれません。
では、裏切られた気がしたとき、どうすればいいかというと、「憤る」のではなく「ガッカリする」のがいいと思いますよ。
「あなたにはすごく期待していたのに、ああもう、ガッカリ……。」
そう思うだけなら、ハートが引き裂かれるほどの激痛は起こりません。
ガッカリだけど、仕方ない。
きっと、自分が期待し過ぎていたんだよね。。
――そういうふうに冷静に考える意識をね、わずかにでも持っていれば、立ち直ることはずっとラクになりますよ。
そして、
「もう二度と誰も信じない!」なんて考えず、
「どこかに私の期待に応えてくれる人はいるはずだから、また探さそう……」と思えるはずです。
本当にその通り。
あなたの期待に応えてくれる相手をね、探すことを止めずにいてほしいのです。
ただし、「私を絶対に裏切らない人間しか信用しない」という狭い心にはならないほうがいいですよ。
なぜって人は誰しも、いろんな理由があって、相手の期待を裏切ることをしてしまうもの。
あなただって、もしかすると、誰かの期待を裏切ったことがあるかもしれません。
「期待されているのは分かるけれど、自分は他の仕事がしたいんだよ」とか、
「待ってほしいと思っていたのは分かるけど、私はもう待てなかったんだよ」とか、
そんなふうに思ったことはないでしょうか?
人間ってお互いに、相手の期待を裏切ることもあります。
そのたび、縁を切っていたら、どんどん孤独になってしまいます。
切れない絆をつむぐには、自分を許し、相手を許す気持ちがいるのです。
ですからどうぞ、腹立ちを落ち着かせ、もう一度、あなたの大切な人に向き合ってみてくださいね。
その勇気さえあれば、あなたはきっと幸せになれます。
裏切っても、裏切られても、もう一度信じ合うことを覚え、孤独ではない人生を歩んでいけるでしょう。
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