多重人格な私たち~心のなかに存在している「いろんな私」とは?

前回のダイアリーで、私たちの心に住んでいる「執着さん」のお話をしました。

実は心のなかにいるのは「執着さん」だけではありません。
私たちの性質って、ある意味、「多重人格的」なのです。

みなさんの心の中には、「理性的で賢い自分」もいるのですが、そのいっぽうで、幼い「執着さん」がいたり、感情に流されやすい「流れ者」だとか、不機嫌になりがちな「ごきげんナナメちゃん」がいたりするんですね。

また、優しさや愛にあふれている「天使ちゃん」がいるいっぽう、よこしまなことを考えつくのが得意な「悪魔くん」がいたりすることもあるでしょう。

こういうふうに考えてみると、自分で自分のことを理解できる場面が増えたり、解けない謎が解けてくると思います

たとえば、みなさん、経験ありますよね?
「昨日の私、なんであんなこと言っちゃったんだろう……」と思うことが。

口にしたことに限らず、自分が犯した失態について、
「自分でも分からないんだよね。なんで、あんなバカなことをしちゃったんだろう……」とボヤキたくなることってね、きっと多くの方が経験しているはず。

そんなときも、「多重人格的な自分」というイメージは役立つでしょう。

たとえば、あなたに不機嫌な自分をコントロールできない傾向があるとすれば、あなたのなかには「ごきげんナナメちゃん」が住んでいるんだと考えてみてください。

そうすれば、家族にケンカ腰な態度を取ってしまったりしたときに、

「ああそうか、あのときの私を支配していたのは『ごきげんナナメちゃん』だったんだろうな。理性的な私だったら絶対にやらないのに、この人格が出てくると、つい余計なことを言っちゃうだよな……。」

と、そんなふうに、今までの自分の言動を理解できるようになるわけです。

それだけではありません。
好きな相手の気持ちもね、ぐんと理解しやすくなったりします。

この続きとして、次回のダイアリーでは「相手の気持ちの正しい読み方」のお話をしようと思っています。

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怒りや悲しみ、切ない恋の未練が消えないときは……

手放すことが困難なもののひとつに「怒り」や「悲しみ」といった辛い感情があります。

誰でも怒っているのはイヤだし、悲しみに浸っているのもイヤでしょう。

でも、怒りが止まらないこと、
あるいは、悲しみが止まらないこと、
――そういうのって、みんな経験していますよね。

きっと私たちの心のなかには、どんなものでも手放すことが苦手な「執着さん」がいるのでしょう。

その子はあらゆる感情をギュッと握りしめて放しません。

怒りがふつふつ湧いてきたときも、悲しみが心にあふれてきたときも、「執着さん」は目ざとく見つけて、その気持ちをつかみます。

「いつまでも怒っていても(泣いていても)仕方ないでしょ!」と、諭そうとみても完全無視。

「ヤダ! 手放すのはイヤ!」とダダをこねる困った存在です。

私のなかにも、この「執着さん」はいます。
あなたの中にもたぶん、いると思います。

私の「執着さん」は、怒りよりも悲しみが好き。
怒りはわりにスラっと手放してくれますが、悲しみはギュギュっと握りしめてしまいます。

この「執着さん」は、「おじぎそう」という植物に似ています。

「執着さん」は怒りや悲しみや不安なんていう感情にしがみついたって、いいことなんてひとつもないということを理解していません。79
とにかく心に湧いた感情に反応して、反射的に握りしめてしまうだけ。

まるで、チョイッと触れるとキュッと閉じる「おじぎ草」です。
要は「自動反応」なのです。

そして、「執着さん」は幼い子供にも似ています。

「ヤダ、これがいい!」
と、他人のオモチャにしがみつく子。

「もう放しなさい!」
と怒る親。

でも、言っても無駄です。
そう言われるほど、子供は友達のオモチャに執着して、意地になって放しません。

困りますよね。
ネガティブな感情につかまって、一日が台無しになったりしていると、夢を叶えることもできないし、人生のクオリティがどんどん落ちるし、生きていくのがしんどくなります。

というわけで、この自分のなかの「執着さん」の鎮め方をね、いろいろ研究してきたのですが、最近になって意外と単純な仕組みが見えてきたところです。

その仕組みとは、「おじぎ草」の仕組みであり、
小さな子供の心の仕組みでもあるんですね。

どちらにも共通しているのは、「かまっちゃいけないこと」です。

だって、「おじぎ草」は触れれば閉じてしまいます。何度も何度もさわっていたら開いてくれません。

でも、そっとしておけば開きます。
放置すればいいのです。

子供が意地になったときも同じです。

「止めなさい!」とか「ダメ!」とか、いろいろと説得を試みるのは逆効果。
そういわれるほど意地になり、自分が欲しいものにしがみつこうとするのが子供です。

でも、子供って飽きっぽいもの。
放っておけば、そのうち飽きて、手にしたものへの興味を失うものです。

これが答えなんですね。

「いつまでも怒っていちゃいけない」とか、
「いつまでも泣いてちゃいけない」とか、
そういうふうに無理やり自分を説得しようとしないこと。

なぜなら、その説得はたいてい無駄に終わります。
それで自信を無くします。

ああ、ダメ。
私ってどうしてこんなに怒りっぽいんだろう……。
どうして、いつまでもメソメソしてしまうんだろう……。

「執着さん」への説得に失敗した理性は、こんなふうに嘆くようになり、「自分は執着さんをコントロールできない……」と判断するようになります。

まるで子育てに失敗した親のように自信を失うわけですが、そうなると、子供の思うツボ。
「執着さん」の力は心のなかで大きくなっていき、どんどん図に乗った行動に出るようになるでしょう。

ですから「説得」は止めましょう。

すべきなのは「放置」です。放任でいいのです。

怒りが止まらない。
悲しみから立ち直れない。
不安が消えない。
あの人への想いを断ち切れない。

どれもこれも、「執着さん」が、その感情を握りしめているせいですから、なんにもしないでおきましょうね。放置しておくことにしましょう。

そして、ただ観察してください。

ああ、私まだ怒っているな。。
まだ悲しみが消えないな。。
まだ不安。
まだあの人が好き。。

――自分のうちに、そういう感情があることに気づくだけ。
あとはまた放置です。

ここで自分を叱りつけたり、なんとか忘れようしたりするのはダメですよ。
それは、閉じている「おじぎ草」に再び触ることだからです。

ただ放任しておきましょう。

自分の悩みを「書くこと」は、それだけでも癒されること

無料のお悩み相談コーナーをはじめて7年になります。

最初のころは、たくさんの方からどっさりメールをいただきました。

全員に即座にお答えできるわけもなく、そうするうちに、応募も減ってきて、けれども完全に途絶えることはなく、気がついたら今みたいな感じになっていました。

「今みたいな感じ」というのは、
「やり取りの数こそ毎月少ないものの、それなりに濃密な言葉を交わし合う感じ」のことです。

みなさん、このコーナーの過去のやり取りを参考に、悩みを書いてこられるのだと思います。

そのため、最初のうちは「彼の気持ちが知りたいです。よろしくお願いします」みたいなメールもあったのに、今ではかなりの長文をいただくことが多くなりました。

詳細を綴ってくださった長いメールは大歓迎です。

そうしていただくと、このコーナーを読まれている方々も、「私の悩みと似ているな……」とか、「そんな辛いことってあるんだ……」と思って共感してくださるし、私も具体的な回答が書きやすくなっています。

ところで最近、トラウマに関する分厚い本を読んでいました。

(タイトルは『身体はトラウマを記憶する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』ベッセル・ヴァン・デア・コーク著 紀伊國屋書店)

その本のなかに、
「言葉の癒し効果」について書かれている章があります。

苦しい経験をしたときは、辛い気持ちから目を逸らさず、その体験について書いてみること――そうすることがいかに大事で、いかに大きな癒しをもたらすかが、その章に書いてありました。

そこには、ヘレン・ケーラーの話も出てきます。

家庭教師のサリヴァン先生の努力で「言葉」に目覚めたヘレンは、自伝のなかに、その喜びを書いているのですが、この本の著者はそんなヘレンの喜びについて、「共感」という言葉を使っているのが印象的でした。

誰にも理解してもらえない……それって苦悩につきまとうものですが、言葉で語ることができたなら、それを誰かに伝えられるわけで、「誰かに分かってもらえる可能性」を私たちは見いだせます。

それがね、救いになるわけですね。

それだけではありません。

この本のなかには、実際に自分のトラウマ体験を書いてもらう、という実験を研究室の学生たちにしてみたら、書いただけで気分がよくなり、免疫力も上がって、心身ともに健康を取り戻せた実証結果が出てきます。

誰かに読んでもらったわけでもない場合でさえ、本当に「書く」だけで癒えるのです。

今のあなたが深い苦悩を抱え、どこにも持っていきようのない気持ちに襲わたり、何ともやるせない毎日が続いていたりするなら、「今の私はこんな苦痛を感じています」といった想いを、とにかく綴ってみてくださいね。

書くという行為が苦境を抜ける一歩になるかもしれませんよ。

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